旧帝大理系博士卒のTKGです.大学院に進学したい.大学院に興味がある.就活失敗したし大学院進学考えようかな.でも、大丈夫かな.うまくやっていけるかな。どんなところかわからない、どんな生活になるのかわからない.アルバイトはできるの?卒業後の進路も不安。学会発表もあるんでしょ?そんな学生の皆さん、あるいは親御さんも心配があるのではないでしょうか?大学院進学に悩みはつきません.
こういう僕も,大学院進学はすごく悩みました.実は僕は地方私立大から旧帝大へ進学した経歴があるのですが,もともといた研究室(というか専攻自体)は,院進学があまり盛んではありませんでした.なので,相談できる同期や先輩が少なく,その後のイメージが沸かないために悩みに悩んだ経験があります.皆さんの不安はヒジョーによく分かるつもりです.特に僕は,学部(4回生)→修士課程→博士課程の流れですべて異なる研究室に所属するというかなり特殊なことをしたので,こういった経験をもとに皆様に役立つ情報をお伝えできればうれしいです.
結論から言うと,修士は進学する価値アリです.なんといっても専門性が上がるので就職に有利であり、修士での経験はその後の人生のかけがえのないものになります.デメリットは経済的な側面と,研究自体が肌に合わないとか与えられたテーマが悪く成果がでないと心を病んでしまう人もいることです.そうならないためにもまず修士課程がどんなところで何をするところなのかを網羅的に伝えていきたいと思います.
以下に概要から詳細まで説明していきますが、理系の実験系の話なので理論系とか文系の院についてではないのでご注意くださいね。
修士課程の活動概要
それではまず,大学院(修士課程)でどのような活動が行われるかですが,下記が主なものだと思います.
- まずは院試とにかく院試
- 聴講(もちろんテストあり)
- 輪講
- 後輩の指導
- 研究室の仕事
- 学会発表
- 中間発表
- 修士論文執筆・発表
- 就活 or 進学のための活動
まずは院試とにかく院試
まずは入学するにあたり、学力試験があります。ある意味大学入試よりきついかもしれません.院進学が盛んな研究室であれば仲間がたくさんいて切磋琢磨できますが,小さな研究室だと孤独な戦いを強いられます.願書提出の時期になると研究室の希望を出せます.普通は自分(4回生時点)の研究室を第一希望にします。もし研究室を変更したい場合は、必ず自分の指導教官及び異動先の教官の許可を得ましょう。これを怠るとその後の院生活が地獄になるので注意が必要です!外部から進学を希望する学生も同様です。院試に受かればOK!ではないですからね!必ず事前に受験することと受かった際にその研究室を希望することを伝えて受け入れの許可をもらってください。さもないと、常識のないやばいヤツ認定確実です。
またできれば研究室見学にいって院生と知り合い過去問をもらえるかを尋ねてください。過去問の有無はほぼ合否の有無と考えてください。なぜなら、間違いなく内部生は過去問で対策してくるからです。そもそも内部と外部で同じ内容の講義をしているわけではないので自分が今まで学習してきたことが試験に出るとは限らないのです。まあ超優秀な子はそれでも受かっちゃいますがね。
研究室配属ですが,入試の結果をもとに上位から希望の研究室を選べる方式になっていますが,ほとんどの学生は4回生のときに配属された研究室へ持ち上がりになります.まれに研究室を変更する学生もいますが,本当に稀です.他大学から進学してくる例外を除いて,同大学での研究室変更はかなり事情がある場合と考えてください.
院試に合格したら
無事院試に合格したら基本的に学部のときと同様,授業があります。コマ数は学部に比べるとおおよそ半分以下なのですが,専門的な内容のものになります.分野によっては訳わからないくらい難しくなることもあります。大学によっては色々事情あったりすると専門じゃないことも教えてくれるかもしれません。ただ,学部のときに比べるとレポート提出でOKな科目もありますが,これは専攻や教員の考えによります.あと,学部の4回生のときから参加することが多いと思いますが,研究室内で輪講があります。この輪講もそうですが修士になって変わることとは,4回生のときのお客様みたいな立ち位置から修士になると研究室のメンバーとしての役割が強くなることです.例えば4回生では先輩である修士の学生が手とり足取り教えてくれて,場合によっては博士の先輩が答えに近いところまでアドバイスくれたりなんてこともありますが,修士になると後輩の面倒を見る側になります.経験を積みできることも増えているので,ボス(教授)の共同研究の人員に組み込まれるなんてこともあるでしょう.
アルバイトはできるのか?
みんなが裕福ではないと思うのでアルバイトができるかどうかにつついても気になるところですが、これはもう研究室によります。一概にはいえません。ただ禁止ということはないでしょう。仕送りだけで生活が賄える人は多くないと思うので。しかしながら、アルバイトありきの生活はやめたほうが良いと思います。必要最低限にすべきです。実験だけではなく論文を読む時間、必要に応じて参考書を読んだり、データをまとめたり、やることは尽きないので学部の時のような生活とは一線を引いたほうが後の不安は少なくなると思います。研究は基本的に答えがあるわけではないので、たまたま良い結果が出れば助かりますが、結果がでなければその後の就活や修論にも影響が大きいです。なので、アルバイトはほどほどにすべきと考えてください。じゃあどうするか?TA(teaching assistant)という制度がある大学は多いのでそういうのを積極的に活用したり、日本学生支援機構の奨学金や専攻事務室に問い合わせれば給付型の奨学金の情報がもらえる場合もあります。ちなみに、TAは学生実験などで大学院生が講義の手伝いをしてるあれです。かなり割のいいアルバイトです。私の場合は、修士の時点で研究室を変えたので、4回生の時の財産がありませんでしたなので、座学から自分でやり直す必要がありました。そのため平日は他の学生よりもやることが多いので、アルバイトは土日の朝から深夜まで詰めておこない、隔週で土曜日に研究室にこもる生活でした。修士の間は休みゼロでした。さすがにここまでする必要はありませんが、アルバイトはほどほどが吉です。裕福な家庭の学生は迷わず支援をお願いすべきと思います。気がひけるのならば就職してしっかりと働いてお返しすればいいいと思います。
研究ってどんなことするの?
普通であれば4回生のときに,卒業研究をすると思います.それをちょっと本格的にしたイメージでいいでしょう.4回生のときは,まず間違いなく指導教官からテーマをもらうことになり,適宜先輩からアドバイスを貰い,何なら先輩がデータを取ってくれるなんてもこともあるでしょう.まだ,データ解析や解釈についての知識は乏しいですからこのあたりも先輩や先生の助言によってほとんど解決するでしょう.次に行う行動についても懇切丁寧に教えて貰える場合が多いです.しかし修士に上がると,ここから一歩踏み込んで多少主体的な行動が求められます.もしくは教える立場に変わります.テーマは持ち上がりなことが多いと思いますが,4回生である程度,実験手法や解釈の仕方などを勉強しているのでそれを応用する形になります.うまく成果が出るのであれば学会発表を行いすぐに論文を執筆するチャンス?も巡ってきます.
当然,実験(研究)をします。4回生の時の続きであることが多いので,これまで勉強してきた内容をより応用的に研究することになります.就職するにしても進学するにしても積極的に取り組みましょう。進学するなら当たり前ですが、就職の場合もどのくらい頑張ってきたのかの基準とされます。また、修士の2年間で学会発表を一度や二度は経験するかもしれません.研究室の方針によるのですが,4回生の卒論でうまく成果が出た場合は,修士に進学して割とすぐに学会発表なんてことはあります.最初はポスター発表からだとハードルが低いです。口頭発表は最初は緊張しますが、たくさん練習すれば大丈夫です。先生や先輩をどんどん頼りましょう。自分で考えず何でもかんでも頼るのは迷惑がられますし、態度として失礼ですが、ずっと考え込むくらいならサクッと質問してどんどん進めたほうが研究室のためにもなります.なぜなら,これらの研究はただ院を卒業するためだけにあるテーマではありません.指導教官の研究の一部を教育の一環として学生に分けているのです.なので研究が進めば先生も嬉しいのです.力になってくれた人に感謝すればいいのです.
専攻によっては中間発表なるものもあることがあります.僕の専攻にはなかったので詳しく語れませんが、おそらく、修士の2回生(M2)の始めかM1の終わりにあるんですかね?学会発表さながらの緊張感でやるみたいです。
修論の準備は早めに!
もちろん最後に,修論発表と提出があります.M2の中盤くらいから意識を始めて後半に入る頃からこれまでの実験の成果をまとめていきます。そしてそこから得られる結果を導いていきます.先輩の修論を参考にまとめ方を勉強しながら自分で執筆します。もちろん博士課程の先輩や先生方がサポートしてくれます.というかサポートなしでは無理です.サポートがない場合はブラック研究室確定です。早いところで12月頃に初稿を提出.1月に修正後,修論発表をおこない,そこでもらったコメントの回答を修論に盛り込んで最終稿を提出します.これで晴れて修士号を取得することになります.就活ばかりで研究が進んでないと修論が辛くなるので注意してくださいね。
修士論文って難しの?
正直言って修士は、努力賞的なところがあるので真面目に研究して修士論文を仕上げれば大丈夫です.その修士論文ですが卒論よりも内容的により高度になります.
まず重要なのは,研究の位置付けです.つまり,その研究が先行研究とどこが違い何が新しいかなどを明確にします.また,用いた手法についてもしっかりと論じ,なぜその手法を用いたかも重要です.そして取得したデータを提示して解析しそこから得られる結果や事実につて論じます.最後に全体として何がわかり何がわからなかったか,また今後の展望について述べる流れになります.
これらは実は修士論文を執筆開始する前にほとんど蹴りがついています.本人が意識しているかは別として,おそらく学会発表をしていると思うのでその時に上記のことについて指導があっているはずです.なのでそれらを参考文献と共にまとめればいいわけです.
簡単かと言われると難しい部類に入ると思いますが、ただ院試に合格する程度の知識と知性を持っているならば、その専攻が要求するレベルの修士論文を書く素地はあるはずです。あとはこれまで真面目に研究してデータを整理してたのかとかが論文の質を決めるので,最後まで気を抜かずに頑張りましょう.
卒業後の進路は?
多くの学生が気になるのは卒業後の進路でしょう.人生に直結ですからね.大学や研究室単位でも差はありますが,修士をでたほとんどの学生が就職します。分野にもよるとは思いますが,修士卒のほうが就職先や就職後の部署や給料が良かったりします.専門性の高い企業では,最低修士くらいの教育を受けてきてほしいのでしょうね.では,進学はどうでしょうか?博士課程に進学するのは良くて1割程度で,そもそも院進学が盛んな大学(研究室)なのかによっても数字にばらつきはあると思いますが,イメージとして1割くらいです.大体の学生は,修士の間に研究に没頭する博士学生の生活をみてこんなんやってられんと,就職を選択します.生き残るのが1割以下といった感じです.では,多くの人は就職が気になると思うのですが,就職先はどうなのかというとやはり地方の国立・私立大に比べて旧帝大はさすが就職先のリストは壮観です.THE大手みたいなところに皆さん就職していくのですね.もしくはニッチでもその分野の主要な企業とか.このあたりは学歴フィルターがかかるので修士どうこうではないのですが,学部卒に比べると専門性が上がっただけ就職先の部署もより専門性の高い部署配属になる可能性が高いです.ただし,採用側の企業がどう考えているか次第なので,一般化することは難しいですが,それでも開発の部署や研究の部署を希望するのであれば最低でも修士卒は最低でも求められていると思います.
まとめ
最後にまとめですが、僕は大学院進学をお勧めします.学力と経済力に問題なければ、その後の人生においてメリットのほうが大きいと考えるからです.今から院進学を検討している学生はまだわからないと思いますが,院を卒業する頃にはかなり論理的な思考が鍛えられレベルアップしているはずです.周りの友人が就職して稼いでいたとしても気にしてはいけません。全く出遅れてなんかいません.将来的にはあなたのほうが出世できる可能性が高いのです.