こんにちはTKGです.僕は大学院博士課程を出てもう5−6年になりますが,最近大学院の話になったので、ここで少し話したいと思います。ここからの話は主に理系大学院の話に限定されますのでご了承ください.
大学と大学院の定義
大学と大学院の違いは,端的に言うと大学は教育機関,大学院は研究機関との位置づけであることです。大学院は教育を目的とした機関ではなく研究活動を行う機関なのです。就活失敗したからという理由で、大学教育の延長と捉えて進学するとそのギャップに苦労する人もいます。ただし多くの学生はきちんと修士論文・博士論文を提出して出ていきます。この辺りは大学にかなり依存するので一般的な話は難しいですが。真面目にするにしてもしないにしても,大学院では基本的に研究活動に従事することになります.
では大学院では教育がないのかというとそういうことはありません。学部と同様に聴講し単位を取得するところまでは同じです。ただその内容の専門性はグッと上がります。また基本的に自分の研究室のテーマでの研究にほとんどのリソースを使います。詳しくはまた別の機会に話したいですが、与えられたテーマを最終的に論文にまとめることが目的なので、それに特化した活動を行なっていく場であると考えてください.
大学院には2種類ある-修士課程と博士課程-
また大学院と一言でいっても、修士課程と博士課程の2つがあります。大学によっては博士前期・後期と呼んだりもします。前期が修士にあたります。通常、修士は2年間、その後博士で3年間過ごすことになります。最短で5年なので、全てストレートでも卒業する頃には26-27歳になっていることになります。長いですね。修士はよっぽどのことがない限りストレートで卒業するのが普通ですが、博士はプラス1年、2年になることはまああります。進学するにつれて要求されるレベルが上がっていくと考えてください.
修論を書いて無事修了すると修士号(master’s degree: MsD.)を受けることができ、修士(理学)とか修士(工学)みたいな感じで、カッコ内に専攻名が入った学位を名乗ることができますが、日本国内ではあまり修士号を名乗っている人を見たことはありません。
博士課程も同じで、博士論文が学内の審査を通ると博士号(Doctor’s degree, あるいは PhD)を受けることができます。こちらも博士(理学)とか博士(工学)といった学位を名乗ることが許されます。博士を取った人は自分の名刺にも普通に書くことが多いです。またふつう学位をもっていると言った場合、それは博士号のことを指すと考えて良いでしょう。修士でもなんでも学位には違いないのですが、あまりそこを強調する人を見たことはありません。
では,学位ってなんですかというと,僕なりの見解ではその人の最低限の能力を証明するものと考えています.学士だろうが修士だろうが優秀な人は博士より優秀です.つまり学位はその人の優秀さを表すものではなく,この人は最低限この基準をクリアできた人ですといっているだけだということです.なぜ博士がちょっと当別扱いかというと,基準の厳しさがかなり違うからです.正直いって修士課程は努力を認めてさえもらえれば,学位をもらえます.しかし,博士は規定の論文数と一定以上のレベルの博士論文をかけないと授与されません.なぜかというと,授与された人はその後博士を名乗るわけで,どこ大の何々研の出身ですと.すれば,それを聞いた人はその人を見て大学ないし研究室(の教授や研究)のレベルを推し量るわけです.その人があまりにもショボいと関係者の威信に関わるのですね.なので,学位授与のルール以上の理由で簡単には学位を授与しないのです.こうすることによってその大学の博士号の権威を担保しているといった構造になっています.
博士はドクター、お医者さんもドクター?
博士号は英語でドクター(doctor)です。博士号をもつひとたちは皆自分のことをドクターであると思っています。しかし、皆さんがドクターと聞くとお医者さんを思い浮かべると思いますが、博士号を持っている人も実はドクターなんですね。これは紛れもない事実で私たちの世界では一般的です。
世界の世間一般にも医者=ドクターという観念は世界共通なようです。例えば、アメリカのテレビドラマシリーズ「ビッグバンセオリー」では、登場人物のペニーはドクター=科学者であることを知ったあと,初めて会ったドクターに対して「あなたはドクターのドクターなの?」(英語なので正確にはうろ覚えですが)と聞くシーンがあり、つまり、いわゆるドクター(医者)なの?それとも科学者のドクターなの?という質問をするシーンがあります。これをみて、あ、アメリカでもそうなんだと感心した記憶があります。
まとめ
話はそれましたが、大学は教育機関、大学院は研究機関で修士と博士があるという大雑把な違いはわかっていただけたと思います。大学でも卒業論文というものがあると思いますが、あれは、基礎の基礎です.卒業論文を書くことで、論文ってこんな感じに書くんだ! → 修論で,もう少し専門的に書いてみよう! → 博論で,自分のオリジナルを書かくぞ!みたいなイメージです.大学はより一般的には社会に出る前のより専門的な教育の現場なんですけど,大学院に進学前段階の”教育”の場であるとも考えられるわけです.